給料日の父の手土産:塩辛とさつま揚げ
子どもの頃、給料日はちょっとした特別な日でした。家族みんなで食卓を囲む夕食が、いつもより少しだけ豪華になる日。そして、その中心にはいつもお父さんが持ち帰る「手土産」がありました。私の記憶に鮮明に残っているのは、塩辛とさつま揚げです。
給料日とお父さんの手土産
給料日が近づくと、家の中に少しだけそわそわした空気が漂います。「今月も頑張った」と、お父さんが心のどこかで思っていたからでしょうか。仕事帰りにお父さんが手に提げてくる紙袋は、家族にとって小さな喜びの象徴でした。
塩辛とさつま揚げ。この2つの手土産を選ぶ理由について、特に聞いたことはありません。でも、お父さんにとっては「お酒の肴」でもあり、家族みんなで分け合うおかずでもあったのかもしれません。
塩辛の塩気、さつま揚げの甘み
塩辛は、ピリッとした塩気とほんのりとした魚の風味が口の中に広がる、絶妙な味わい。まだ子どもだった私には少し大人の味でしたが、その独特な風味が妙にクセになり、ほんの少しずつ味見をするのが楽しみでした。
一方のさつま揚げは、ふんわりとした食感と優しい甘さが特徴的。温め直してから食べると、さらに香りが引き立ち、家中に幸せな香りが広がりました。何気ないその一皿に、家族みんなが「美味しいね」と笑顔を見せるひととき。それが何よりの贅沢だった気がします。
父の気持ちを想う
子どもの頃には気づきませんでしたが、お父さんにとっての手土産は、きっと「家族への感謝」や「少しでも喜んでほしい」という想いの表れだったのでしょう。働いて得た給料の一部を、家族のためにこうして使うこと。それが、お父さんにとっての誇りや喜びだったのかもしれません。
大人になって振り返る思い出
今では私も、給料日になるとお父さんを思い出します。特に塩辛やさつま揚げを手に取るたびに、あの頃の食卓の光景がふっと蘇ります。あの温かな食卓を作り上げてくれたお父さんに感謝しつつ、私も少しでも家族を喜ばせられるような存在になりたいと思います。
ささやかだけれど特別だった、あの頃のお父さんの手土産。それは、私にとって「家族の絆」を象徴する大切な思い出です。皆さんにも、そんな温かい記憶のひとつがあるのではないでしょうか?